ここ数年で弁護士を取り巻く環境は変化し、同業者同士の競争が激しくなってきました。
「事務所を開いたけど、顧客がこない」、こうした悩みをもつ弁護士は多いのではないでしょうか。結論から言えば、現代の弁護士は営業力がなければ仕事は入って来ません。
逆に言うと営業の方法さえ身に付けば、集客は成功しやすくなります。当記事では、弁護士の集客がうまくいかない理由から、弁護士におすすめの集客方法までご紹介します。
現代の弁護士がなかなか成約につなげられない理由
かつて弁護士の仕事の獲得方法は、知人や士業仲間からの紹介が一般的でした。しかし平成・令和の時代だと、それだけでは競合弁護士との競争に勝てません。その主な理由は以下の4つです。
- 弁護士の数が増え続けているから
- 競合も集客・営業術を取り入れつつあるから
- 依頼するか迷っている顧客に会えないから
- 会える人数に限界があるから
現代の弁護士が実力だけでは成約につながらない理由を、以下で見ていきましょう。
弁護士の数が増え続けているから
弁護士の数は年々増えており、弁護士同士で顧客の取り合いが起こっています。実際に日本弁護士連合会の登録弁護士は、2009年の26,930人から2019年の41,118人と、約53%も伸びました。過去5年間の推移は以下の通りです。
年度 | 弁護士の数(女性) |
2015年 | 36,415(6,618) |
2016年 | 37,680(6,896) |
2017年 | 38,980(7,179) |
2018年 | 40,066(7,462) |
2019年 | 41,118(7,717) |
日本弁護士連合会の発足当初は約6,000人だったことを考えると、いかに競争相手が多くなったかがわかります。
競合弁護士も集客・営業術を取り入れつつあるから
インターネットやSNS(FacebookやInstagramなど)を用い、すでに集客・営業術を磨いている競合弁護士は少なくありません。また積極的なセミナーの開催や書籍・記事の執筆等を通じ、名前を売る弁護士も増えてきました。
事実、ポータルサイト「弁護士ドットコム」の登録者数は17,000人と弁護士全体の1/3です。また、士業専門で集客・広告活動をサポートする業者も増え、成約や知名度獲得の成果を挙げています。
依頼するか迷っている顧客に会えないから
弁護士への依頼を迷っている段階の人は、問い合わせや相談などのアクションは起こしません。この「どうしようかな?」と悩む層へのアプローチを考えなければ、せっかくの潜在的な顧客を逃すことになるでしょう。
内閣官房の「法曹人口調査報告書」によると、弁護士への相談を考えた人の中で、実際に依頼したのは32.4%のみでした。その理由のトップ3は以下の通りです。
- 弁護士の探し方が分からなかったから
- 自分で解決できると思ったから
- 弁護士に依頼するような問題ではないと思ったから
つまり、気軽に相談できる環境や「このトラブルは弁護士に任せられる」という情報が伝われば、悩んでいる潜在顧客もあなたに問い合わせしやすくなります。
会える人数に限界があるから
従来の紹介中心の集客活動だけでは、会える人数に限界があります。弁護士への相談の基本は1対1であり、相談によっては何時間も拘束されるためです。
もしその相談者と顧問契約を結べなければ、何時間分の労力に見合わないでしょう。さらに他の弁護士が集客に力を入れていれば、その見込み顧客はそちらに流れてしまいます。
見込み顧客を取り込むためには、より多くの人にあなたの存在を知ってもらわなければなりません。その戦略として、以下より弁護士におすすめの集客方法を紹介していきます。
弁護士集客術①|Web・インターネット集客
Web・インターネットを使った集客は成果を上げやすく、なおかつ継続性もある効果的な方法です。あなたのWebコンテンツ(ホームページやSNSアカウント)を制作し、そこに相談者や見込み顧客を集めます。Web集客のメリットを以下でまとめました。
メリット | 詳細 |
時間の効率化 | 自分の代わりにコンテンツが営業や案内をしてくれる |
安定した受注 | 一度仕組みを作れば半永久的に残る |
得意分野のアピール | 事務所の強みや専門分野をWebに掲載でき、顧客に選んでもらいやすくなる |
依頼を断りやすい | 知人からの紹介ではないため、顔を立てる必要がない |
「法曹人口調査報告書」では、インターネットで弁護士を探す人は21.7%と、約1/5を占めていると結果が出ています。今後もこの流れが加速すると予想されるため、今のうちに対策を講じましょう。具体的には、以下の方法がおすすめです。
- SEO
- リスティング広告
- SNS(ソーシャルネットワーク)
以下より、それぞれの特徴やメリット・デメリットをご紹介します。
SEO
SEOとは、Googleの検索結果の上位表示(検索結果ページの上の方に、自分のホームページを出現させる)させ、集客や契約につなげる方法です。検索エンジン最適化を意味し、Search・Engine・Optimizationの頭文字を取ってSEOと呼びます。
検索結果の1位と2位のクリック率では、21.12%と10.65%と約2倍の違いがあると、「INTERNET MARKETING NINJAS」の調査結果が出ています。
つまり1位表示されれば、より多くの検索ユーザーがあなたのページを訪れるでしょう。
SEOのメリット
- 広告費と比べ対策費用がかからない
- 長期安定の集客が見込める
- キーワードの悩みをもつ人との成約につながる
- 上位表示は信頼を得やすい
GoogleやYahoo!などの検索するキーワードは、つまり「検索者が知りたい・悩んでいる事柄」です。たとえば離婚に悩む検索者が「弁護士 離婚問題」と検索します。
その後、そのキーワードで上位表示したホームページが検索者の悩みを解決すれば、「この弁護士なら私の相談に乗ってくれるかも」と、問い合わせする可能性が高くなるのです。
SEOのデメリット
- 結果が出るまでが長い(数ヶ月・数年単位)
- 専門知識がなければ難易度が高い
- 検索結果のアルゴリズムに順位が左右される
- コンテンツの作成に時間・労力がかかる
もしすぐにでも結果が欲しい場合は、リスティング広告や他の集客方法を選びましょう。
リスティング広告
GoogleやYahoo!で検索したとき、検索結果の上の方に「広告」とついたホームページが表示されることはないでしょうか。あれがリスティング広告です。
入札方式の有料広告枠に、あなたのホームページを表示できます。
リスティング広告のメリット
- SEOに関係なく狙ったキーワードで上部に表示できる
- 広告継続とストップのどちらも簡単にできる
- 広告文を自由に書ける
- すぐに出稿できる即効性がある
リスティング広告のデメリット
- 広告はクリックされにくい
- 狙ったキーワード以外で広告が出ない
- 広告費が継続的にかかる
- 競合が多いと入札でさらに費用がかかる
費用に余裕があり、すぐに成果を見たい人にリスティング広告はおすすめです。
SNS
SNS(ソーシャルネットワーク)を利用し、ホームページやあなた自身を売り込んで集客する方法です。FacebookやInstagram、Twitterなどで法律の専門家としての情報を発信し、信頼を得ていきます。
SNSのメリット
- 自己開示や交流で信頼を得やすい
- ホームページのリンクを貼って流入が狙える
- 費用がほとんどかからない
- 拡散力が高い
SNSのデメリット
- 直接的な成果につなげるまでが少し遠い
- 悪評やミスも広まりやすい
- ビジネス色が濃いと反感を買いやすい
交流ツールであるため、利益よりファンの獲得が主な利用方法になります。
弁護士集客術②|セミナー開催や地域活動への参加
インターネットやSNSを使わない、オフラインでの活動での集客や営業も忘れてはなりません。全国各地でセミナーを開催したり、事務所周辺の地域と交流を図ったりなどがこれにあたります。主なメリットは以下の通りです。
メリット | 詳細 |
顧客との関係性の構築 | 直接顔を合わせることで信頼を獲得しやすい |
権威性がアピールしやすい | 弁護士の先生として認知される |
地域の見込み顧客獲得 | 近所の相談者を集めやすい |
それぞれの方法を以下で見ていきましょう。
セミナー開催
全国各地や地元でセミナーを開催することで、見込み客や同業者に自分の顔を売ることができます。セミナー開催のメリットは以下の通りです。
- 「先生」と認知され参加者の信頼を集めやすい
- 人脈が広がり他士業の人との業務提携も狙える
ただし、セミナーに人を集められる実力や広告活動が必要になります。
地域活動への参加
自分が住んでいる地域の活動に参加することでも、本業の集客につながります。たとえば、地域コミュニティで法律の無料相談会や説明会を開くのも1つの方法です。主なメリットは以下の通り。
- 地域の見込み顧客と距離が縮められる
- インターネットを使わない人に知ってもらえる
- 地元法人との契約も狙える
必ずしも集客や成約につながりませんが、地域との関係性を深めることは、弁護士として大切な活動といえます。
弁護士集客術③|オフライン広告
業務広告に関する指針で制限があるとはいえ、チラシや公共機関を利用したオフライン広告も有効です。Web集客と同じく、不特定多数の見込み顧客にアプローチできます。ただし弁護士の品位や信頼を損なう、以下の広告は禁止されています。
- 事実に合致していない
- 誘導や誤導のおそれがある
- 誇大や過度の期待を抱かせる
- 困惑や過度な不安をあたえる
- 他社との比較を載せる
- 法令や会則に違反する
- 弁護士の品位を損ねる
あらためて上記の禁止事項を確認しておいてください。続いて、オフライン広告のおすすめの方法は以下の3つです。
- タクシー広告
- ラジオ広告
- 電車の広告
ターゲットや予算に合わせて、効果的な広告を作成しましょう。
タクシー広告
ドアステッカーやアドケースなどに広告を表示する方法です。最近はデジタルサイネージと呼ばれる、タクシー内の画面で広告動画を流すタイプも広まってきました。
目に入る範囲は限定的ですが、タクシーをよく使う経営者や富裕層向けの広告が効果的です。
ラジオ広告
ラジオ番組の合間などで流れるCMを利用する方法です。流す時間帯や曜日を分析することで、ターゲットにする層を明確にできます。また、ローカルラジオであれば地元の住民へのアプローチに効果的です。
【CM効果】
半年間、1年間と長期にCMを放送することによる刷り込み効果で、リスナーにとって信頼と安心を兼ね備えた身近な法律事務所として認識されます。
それにより、「法律関連のトラブルに巻き込まれて困った」という際に、相談先として数ある弁護士の中から一番最初に選ばれる可能性が高くなります。
引用元:弁護士・法律事務所によるラジオCM展開(長期レギュラースポットで反響促進)|Rbox
ただし、音声情報しかないことや聞き流す人が多い点はデメリットといえます。
電車の広告
電車の吊り革やドア横などに広告を表示する方法です。毎日電車に乗るビジネスパーソンへのアプローチはもちろんのこと、地域ごとでもターゲットを絞れます。
【アトム法律事務所様】バス広告を利用した企業広告・求人広告事例(バス広告・車内窓上ポスター)
バス広告を利用した企業広告・求人広告の事例をご紹介いたします。
【お客様名】 アトム法律事務所 様
アトム法律事務所 様は、新宿・北千住・横浜・名古屋・京都・大阪・福岡に各支部を構え、日本では数少ない刑事事件を専門的に取り扱う法律事務所様です。
新人弁護士を募集にあたりバス広告(車内まど上ポスター)をご利用頂きました。●東武バス 窓上ポスター広告
バス窓上ポスター広告は営業所単位でのご実施が可能です。
引用元:【アトム法律事務所様】バス広告を利用した企業広告・求人広告事例(バス広告・車内窓上ポスター) |交通広告ナビ
また、毎日の通勤で目に入る回数が増えることによる、単純接触効果による評価アップも狙えます。ただしマイナスの単純接触効果もありえるため、デザインや文章が重要です。
弁護士ポータルサイトなどへの登録
弁護士のポータルサイトとは、複数の弁護士が登録しサービスを利用しているホームページです。すでに弁護士と相談者をつなぐ仕組みが整っているのが特徴といえます。利用のメリットは以下の通りです。
メリット | 詳細 |
労力がかからない | すでに仕組みが組み上がっている |
気軽に利用できる | 会費を払うなどの簡単な作業 |
ホームページのサービスが使える | プロフィール掲載やピックアップ表示など |
弁護士の登録先として代表的なものは以下の通りです。
- 弁護士ドットコム
- 弁護士ナビ
- 法テラス
- グーグルマイビジネス
こちらも、あなたの希望にあったサービスに登録してください。
弁護士ドットコム
公式サイト:https://www.bengo4.com/lawyer/
国内最大の弁護士ポータブルサイトです。2020年5月現在、17,470人もの弁護士が登録しています。相談者と弁護士の見積もりのやり取りや面会までの段取りも行えるシステムをもつため、弁護士にとっても利用しやすいサービスといえるでしょう。
無料から登録できますが、初期手数料5万円と月額2万円を支払うことで、すべての機能を利用できます。
弁護士ナビシリーズ
全国の弁護士や法律事務所を、分野別・対応エリア・目的・得意分野などの条件で検索できるポータルサイトです。相談者の悩みが検索エンジン上位表示になるSEOの強さや、「離婚」「労働問題」「交通事故」「IT」など、得意分野ごとに分けられたサイト設計が魅力。申込みから1~2週間、最短3日でプロフィールが掲載できます。
初期費用、月額固定費は法律事務所単位での掲載のため、弁護士ドットコムよりも高めですです。
法テラス
法テラスは、法務省が管轄する国のポータルサイトです。こちらを利用するには、法テラスのスタッフ弁護士として雇用される形になるため、集客とは少しズレます。ただし、安定した仕事と手厚い手当があり、その他の福利厚生も整っているため、安心して働きたい弁護士にはおすすめです。
登録するには、民間企業と同じように書類選考と面接を突破しなければなりません。
公式サイト:https://www.houterasu.or.jp/index.html
Googleマイビジネス
Googleマイビジネスとは、GoogleマップやGoogle検索上に事務所の位置や詳細、投稿写真を表示できるシステムです。ポータルサイトとは少し違いますが、Googleに登録すれば無料で利用できます。
弁護士探しもインターネット検索が主流になっている昨今、Googleサービスの利用は集客に有利といえるでしょう。
Google マイビジネスとは
Google マイビジネスは、さまざまな Google サービス(Google 検索や Google マップなど)上にローカル ビジネス情報を表示し、管理することができる無料ツールです。実店舗に顧客を迎え入れてサービスを提供するビジネスや、エリア限定でサービスを提供するビジネスを営んでいる方は、このツールを活用すればユーザーにビジネスをアピールすることができます。Google でのオーナー確認を済ませているビジネスは、ユーザーからの信頼度が倍増する傾向があります。
引用元:Google マイビジネスへようこそ – Google マイビジネス ヘルプ
弁護士・法律事務所が集客を成功させ、依頼獲得につなげる4つのコツ
弁護士が集客をより成功させるには、集客方法や営業の質を上げる必要があります。以下4つのコツを用い、さらなる依頼獲得につなげましょう。
- ポジションを確立し検索されやすくする
- 自コンテンツの質を高め続ける
- さまざまなWebコンテンツの執筆・監修で名前を売る
- 他の士業・医者・コンサル会社と連携する
手がつけられる部分から、複数実施することをおすすめします。
ポジションを確立し検索されやすくする
競争を勝ち抜くには、「相続の案件ならこの人!」「地域で一番の弁護士」と言われるほどのポジションを確立しましょう。あなたに依頼したいと思わせるほどの価値が顧客に伝わらなければ、他弁護士との競争に勝てません。
「自分はどんな弁護士か」「なにができるか」という情報を、常に発信し続けてください。
自コンテンツの質を高め続ける
制作したホームページの記事やデザインの質は、常にアップデートを続けましょう。一度作成して終わりではなく、Googleの上位表示や問い合わせされやすいデザインを追求することで、より成果や顧客満足度を高められます。
結果、評判が広まりさらなる依頼を獲得できるはずです。
さまざまなコンテンツの執筆・監修で名前を売る
他のホームページへの寄稿や監修、書籍出版などの活動を通じ、さまざまなコンテンツに自分の名前を残しましょう。そのホームページの訪問者があなたの名前を見て、問い合わせをする可能性があります。
とくに大手メディアであれば、依頼者増やセミナー講演依頼などにもつながるかもしれません。
また記事の執筆業という、新しい業務も開拓できます。
他の士業・業種の会社と連携する
弁護士でも手が回らない分野を専門とする専門家と提携しておけば、ワンストップ(他のところに依頼せず1つの事務所で完結)サービスで顧客の満足度が高まります。税理士や弁理士、社会保険労務士と提携し、あらゆる分野の相談に対応できるようにしておきましょう。
また、医者や保険会社などとの業務提携もおすすめです。
弁護士は集客に力を入れて依頼につなげよう!
現代の弁護士は実力だけでなく、集客や営業に力を入れなければ依頼を獲得できません。以下4つの方法を用い、自分から情報発信や営業を実施しましょう。
- SEOやSNSなどのWeb集客
- セミナー開催や地域コミュニティ活動参加
- オフラインの広告制作
- ポータルサイトへの登録
上記の集客方法を実践しながら、ポジション獲得や自コンテンツのクオリティアップを進めることで、より見込み顧客にあなたを知ってもらえます。
ぜひ集客戦略を練り、誰からも依頼される弁護士を目指してください。